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St John Karp

本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。

親愛なるGoogleへ

これは僕のせいじゃない。間違いなく君のせいだ。

僕たちは最高の出会いをしたね。君は検索エンジンのエキスパートだった。僕がそれ以前に出会ったLycos、AltaVista、AllTheWeb、WebCrawler…。僕は当時これらの検索エンジンがイケてると思っていたけれど、君の出現で全てが変わった。そして、君の進化もここまでかと思われた頃、君はGmailを誕生させた。Gmailは、僕がそれまでに使ったどのメールソフトよりスパムが少なく、スタイリッシュだった。君が下着モデルなら、Hotmailはトイレ用洗剤のToilet Duckをどれだけ使っても落ちない便器の底の嫌な汚れのようなものだったよ。

それなのに…どう言えばいいだろう? 君は変わってしまった。

変化

Google+をうまくいかせようとしても無駄だ。それは達成できない。

Google+をうまくいかせようとしても無駄だ。それは達成できない。

私はGoogleをこき下ろすつもりはありません。実のところ、恋人を虐待する彼氏という例えがぴったりなのですが、そこまで悪く言うべきではないでしょう。

Googleが一企業だというのは周知の事実ですから、Googleがおかしくなってしまったことにそれほど驚く理由はありません。とはいえ、この変化には心が痛みます。かつてはユーザの利益になるサービスを提供していたGoogleが、今では羊の毛を刈るように顧客から情報を奪い始めたのです。Googleがユーザから直接料金を徴収したことは一度もないので、Googleに巻き上げられたとまで言うつもりはありません。しかし、Googleはユーザを広告主に売り始めました。あるユーザの言葉、「料金を支払わないのなら顧客ではなく、製品だ」 ^(1) は正しかったのです。ユーザの検索やメールは、データの宝庫になりました。このこと自体に大きな支障はありません。無料のサービスを受けるためなら、大抵の人は多少の広告を無視するくらいの我慢はできます。しかし、生活のあらゆる面に関わるメールが他人のサーバに居座り続け、しかもその他人の意図がどんどん信用ならなくなっている現実を知れば、無意識のうちにファウストじみた協定に加担させられているような気がしてくるでしょう。

10年後、ユーザのデータはどうなっているでしょうか? 本人はきっとすっかり忘れてしまうでしょうが、実はそのデータがサーバを変えながら12回もバックアップされていたらどうしますか? 削除したメールは本当の意味で削除されたのでしょうか? もし不誠実なGoogleの社員がいろいろと詮索し始めたらどうなるでしょうか? もしGoogleが破綻したら? 大企業が破綻し、その内部データがデータベースの売却やハードディスクドライブの回収という形で外に持ち出される事例は以前にも起こっています。

Googleが全てのサービスを統合し始めてからは、更に事態が悪化しました。これまでGmailにしかサインアップしていなかったのに、GoogleによるYouTubeの買収以降、突然GmailがYouTubeのアカウントに連携されるようになり、また、好むと好まざるとにかかわらず、Google+にも連携されます。何年も個別に管理していたアカウントが密接に連携されて、以前と同じような自由度を保つことができなくなりました。ユーザはいまやGoogleが望む範囲内でしか行動できなくなってしまったのです。

友人から聞いた話です。あるユーザはgangstakilla999というチャンネル名でYouTubeに登録していましたが、YouTubeとGmailが連携されると、彼のGmailの”From”にもそのチャンネル名が表示されるようになりました。そのユーザは、彼の求職の応募に突如誰も応じなくなった理由が分かりませんでした。また、トランスセクシャルであることが職場の同僚に突然露見した人たちの事例も数多くあります。このような人たちは、このふざけたアカウントの連携のせいで、プライバシーを著しく侵害されただけでなく、生活まで脅かされました。

Googleには「悪事を働くな」という有名な企業スローガンがあります。大層立派な目標ですが、他人である彼らがそのスローガンを守ると本当に信じられますか? 企業であるGoogleの存在意義は収益を得ることです。それこそがGoogleの最優先事項であり、ユーザの最善の利益ばかり追求しているわけでないことは明らかです。例えGoogleが邪悪とは言い切れなくても、Googleが潔白、優秀、かつ正直であるとは断言できないのです。最近のGoogleの戦略の多くは、自分でも操りきれないような力を持った”技術おたく”っぽい感じがします。彼らがいいソフトウェアを作れるからといって、それを管理する方法を知っているわけではありません。近頃Googleのプロジェクトがほとんど失敗に終わっていることを見れば、この会社が落ち目になっていると言えるでしょう。彼らは間違いを犯し、サービスを停止し、人々を望みもしない製品に囲い込もうとしています。彼らの混乱がますます絶望的なものになるにつれ、いずれYahoo!と同じ道をたどることになるでしょう。つまり、かつては優れていたアイデアも今は中身のない空っぽの抜け殻で、ライオンがいなくなったサーカスみたいなものです。棺に最後の釘を打ち込むために必要なのは、代わりのもっといいサービスへの乗り換えです。

別れ

実際にGoogleから離れることはできるのでしょうか。おっしゃる通り、Googleを打ち負かせるような代わりのいいサービスはまだ現れていません。でも、有償であれば、金額に見合うそこそこのサービスがいくつかあります。もちろんお金は掛かります。でも無償のサンプル版があって、Googleによく似た機能を提供しているのです。メールのために1カ月500円程度の料金を払うことに、それでも不満ですか。

私は、この6カ月の間に、徐々にGoogleとの関係を断ち切りつつあります。このプロセスは必然的にゆっくりしたものです。メール容量が数ギガバイトにも及ぶ場合には特に。とはいえ順調に進んでいました。でも、私がGmailアドレスのうちの1つを削除しようとした時に、盲点を突かれました。Gmailアカウントを閉鎖することで、うかつにも、Voice、YouTube、FeedBurner、Analyticsを含む全てのGoogleサービスが使えなくなってしまったのです。何てことでしょう。Googleが私に複数アカウントを個別に管理させてくれないのだったら、私も自分のアカウントの管理を一切やめます。登録をやり直して、消えてしまったものを少しずつ取り戻すなんてことはせずに、我が道を行くことにします。

メール

「Google離れ」をするに当たって一番優先すべきは、メールをどうするかでしょう。これには注意が必要です。なぜなら、メールは本当に私たちの生活の中心になっているからです。正しい選択をしないと、1998年のHotmailと同じ羽目に陥ります。Snowden事件の一連のごたごたで、この1年でいい変化がたくさん起こりました。インターネット・セキュリティやプライバシー保護を要求する声が高まったからです。私もHushmailなどのようなサービスをいくつか勧められました。これらは、料金を支払ってメールさえ使えれば、というユーザにとってはいいサービスだと思います。

自分の人生を自分の手に取り戻したいと思うのなら、自分でメールをホスティングすることも選択肢です。設定は難しいとはいえ、維持はそれほど難しくありません。最近、インターネット上でMailpileが大きな話題になっています。これは、自分のメールサーバを持っている人向けのWebメールツールです。ものすごくカッコよさげに見えるのに、アルファ版が全く使えるようなものでなかったのにはがっかりしました。一方の RainLoop は、フル機能を備えた世界一のWebメールとは言えないかもしれませんが、Mailpileにないものを全て備えています。おまけに、使い勝手のいいユーザインターフェース(UI)も備えています。メール本文の表示枠とメール受信箱の表示枠を縦に並べるようなメール・クライアントが出てきたら、絶対にそんなものは使いません。90年代後半だったらそれでよかったでしょうが、今のコンピュータのスクリーンは横長で、縦長ではありません。メール本文とメール受信箱の枠は、横に並べてほしいのです。RainLoopとMailpileはそうしてくれていますが、他のオープンソースのWebメール・クライアントは、いまだに2002年のスタイルのままで固まっています。

Webブラウザ

次に優先されることは、Webブラウザです。Chromeが先陣を切っているということは受け入れることにしましょう。一番速く、カッコよく、他のブラウザよりもUIが使いやすく、すっきりしています。しかし、同時に、これはGoogleがあなたの生活に入り込む新たな足掛かりにもなります。Chromeはあなたがオムニバーに打ち込む全ての言葉をキャプチャして保存し、あなたのGoogleアカウントに結び付けます。こうした機能の多くは無効にできますが、Googleがあなたのコンピュータ上で他に何をやっているかは、神のみぞ知るところです。

とは言うものの、最近まではChromeに匹敵するようなブラウザは見当たりませんでした。以前に使っていたFirefoxも、Chromeの性能向上に伴い乗り換えてしまってからは、ほとんどその存在を気にしたこともなかったくらいです。今回、元の鞘に収まろうと、改めてFirefoxを起ち上げてみましたが、その印象は、日焼けマシンに寝そべって体を焼きながら、両切りのたばこを1日に2箱も吸い上げる1920年代に旬を終えたスターとでも言いましょうか。遅くて洗練さに欠ける目の前のブラウザを見ていると、頭の中にChromeの影がよぎるのでした。

そんなわけで、何か代わりのブラウザがないかと探していたちょうどその矢先(経験談:Operaはお勧めしません)、Mozillaがやってくれました。Firefoxバージョン29の登場です。それはまるで、老いの皮を脱ぎ捨てた20年代のスターが、「驚いたでしょ? 私はまだセクシーなのよ!」と叫んでいるようにも思えました。1回のバージョンアップで、タイタニック号が氷山と衝突するのを見事に回避したのです。確かにUIなどは、かなりChromeと似通ったものになりましたが、詰まるところ、それがトレンドというものです。デザインをちょっとくすねたところで、私の知ったことではありません。大事なのは旧バージョンよりも動作が速く、快適になったということなのですからね。このバージョンアップで、Firefoxが十分にChromeを代用できることが証明されました。あなたがもし、Chromeの使用について何らかの不安を抱いているようであれば、ぜひ一度、Firefoxを試してみてください。

検索エンジン

これが最も難しいですね。Googleが現在の地位を築いたGoogleたる由縁と言ってもいいでしょう。そして、彼らの最後の牙城とも言えます。周りを見回してみると、代わりの検索エンジンがないわけではありません。例えば、DuckDuckGoやIxquickがそうです。でも、使い勝手においてGoogleを上回るかというと、残念ながらノーと言わざるを得ないのが現状です。結論として、気は進まないものの、検索サービスだけはこれからもGoogleを使うことになるでしょう。

でも、だからといってGoogleに服従して、彼らの横やりを逐一受け入れろと言っているわけではありませんよ。あなたのコンピュータは言わずもがな、あなたのものです。どんな情報を提供し、受け取るかはあなた自身が決めるべきなのです。広告が煩わしいと思っているのなら、 AdBlock Plus をインストールしてみてください。するとどうですか。Googleの忌まわしき広告を見なくても済むようになりますよね(それどころか、読み込みもしないはずです)。トラッキングをブロックしたければ、GhosteryやDoNotTrackMeが有効です。これで、ブラウジング中の挙動について、Googleが収集できるデータを減らすことができます。もちろんGoogleにとっては、私たちがここまでしたとしても、検索ワードやIPアドレスの情報などは収集可能です。彼らは情報で着飾りたくて仕方がないのでしょう。だったら、そんなパンくずのような些末な情報はくれてやればいいのです。そのうち、私たちの抵抗で窒息させてやりましょう。ここでの私のメッセージは単純明快です。つまり、インターネットはあなたのものだということ。彼らの悪行を我慢し続ける必要なんて全くありません。

その他

Googleが提供するサービスの全てについて、代わりとなるものをここで挙げることはしません。ただ、多かれ少なかれ何らかの代替ツールは提供されています。私自身の話をすると、Analyticsの代わりには Piwik を使っています。Feedburnerには、何も代わりを用意していませんが、そもそもFeedburnerに用がある人なんてほとんどいないでしょう。YouTubeは利用者数の多いサイトで、私もビデオをアップしているものの、今は停止中です。現在、国外にいる関係ですぐにはできませんが、帰国したら映像を新しいサービスにアップロードし直そうと考えているところです。DailymotionやVimeoの評判がいいようですが、実際のところはどうなんでしょうかね。何かお勧めはありますか?

終わりに

Googleへ、本当に楽しかった。これは正直な気持ちだ。でも、君の触手のようにまとわりつく抱擁から解かれた今、僕は生まれ変わったような気がするよ。自分の生活を取り戻したと言っていい。もう君が善か悪かなんて気にする必要がなくなったんだ。君はこれからもやりたいようにやるだろうけど、果てにはYahoo!やWebCrawler、つまり僕が酒を飲みながら笑い飛ばすような人々や、道で会ったら目を背けたくなるような人々と同じ運命をたどることになるだろう。今やそれらのいずれもがずんぐりして、しわくちゃで、憂いを帯びている。いい年の取り方をしていないということさ。そして、君もその仲間なんだよ。

それでは。
St John

追伸

君が酔って書いたようなまじめくさったメールは読まずに削除したよ。僕たちは、もう以前のような関係ではないんだ。変な風に取らないでくれ。

注釈​


  1. あるユーザとは、 MetaFilterのディスカッションのblue_beetle だという情報を得ました。

監修者
監修者_古川陽介
古川陽介
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 グループマネジャー 株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 Node.js 日本ユーザーグループ代表
複合機メーカー、ゲーム会社を経て、2016年に株式会社リクルートテクノロジーズ(現リクルート)入社。 現在はAPソリューショングループのマネジャーとしてアプリ基盤の改善や運用、各種開発支援ツールの開発、またテックリードとしてエンジニアチームの支援や育成までを担う。 2019年より株式会社ニジボックスを兼務し、室長としてエンジニア育成基盤の設計、技術指南も遂行。 Node.js 日本ユーザーグループの代表を務め、Node学園祭などを主宰。